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評価運用

タレントマネジメントシステムを入れたのに使われない。次に確認したい3つのこと——「入力しない社員」を責める前に

(更新:) ・曽良 竜太 (コレドウ代表取締役)
タレントマネジメントシステムを入れたのに使われない。次に確認したい3つのこと(記事のイメージ)

この記事の要点

  • 導入経験者1,771人への調査では、6割が導入後に課題が発生したと答えている。上位は「現場に浸透しない」「入力・更新が続かない」「データが集まらない」。使われないのは、あなたの会社だけではない
  • 使われない会社で起きているのは、システムが目標と評価のワークフローにだけ使われ、あとは更新されない人材データベースになっている状態。原因は入力する側の怠慢ではなく、入れても何も起きないこと
  • 次に確認したいのは3つ。日々の業務の状態が正しく反映される仕組みがあるか。入れたデータを何に使うのか決まっているか。誰にどんなベネフィットがあるかが明示されているか

タレントマネジメントシステムを入れた。人事は準備をして、説明会もやった。でも、ログインしているのは人事だけで、社員のプロフィールは入社時のまま止まっている。

この状態を、僕は本当によく見ます。300社超と目標や評価の話をしてきて、人材データベースが「生きている」会社は、ほとんどありませんでした。

この記事は、その状態にある人事の方に向けて書いています。誰が悪いという話ではなく、なぜそうなるのかと、次に何を確認すればいいかの話です。

使われないのは、うちだけなのか?

うちだけではありません。むしろ多数派です。

スマートキャンプ株式会社が2025年9月に行った調査では、タレントマネジメントシステムの導入に携わった経験がある1,771人のうち、導入後に課題が「発生した」と答えた人が62.1%でした。課題があったと答えた1,100人が挙げた内容の上位は、次の5つです。

  • 操作性が悪く、現場に浸透しなかった(537人)
  • データ入力・更新が徹底されず、情報が古くなっていた(452人)
  • 既存システムとの併用で、人材データが分散した(413人)
  • 社員や部署の協力が得られず、データが集まらなかった(330人)
  • 導入目的があいまいで、施策に落とし込めなかった(310人)

操作性を除けば、残りは全部「データが入らない、続かない、集まらない」の話です。同じ調査は、どのシステムを選ぶかより「運用の準備」が重要だと結論づけています。

僕もその通りだと思います。ただ、ここで言う「運用」を、入力ルールを徹底することだと受け取ると、次の手を間違えます。

使われない会社では、何が起きているのか?

起きているのは、システムが目標と評価のワークフローにだけ使われ、あとは更新されない人材データベースになっている状態です。

期初に目標を入れる。期末に評価を入れる。この2回は、入れないと給与が決まらないので全員が入れます。ワークフローとしては動いている。

でも、スキル、経験、資格、キャリア志向、上司からのコメント。人材データベースとして期待していた部分は、導入時に一度入れたきり止まっている。異動があっても、プロジェクトが終わっても、何も足されない。

人事はダッシュボードを開くけれど、そこに映っているのは1年前の会社です。それでは配置にも育成にも使えないので、人事も開かなくなる。誰も見ないので、誰も入れない。この循環が、静かに完成します。

なぜ、誰も更新しなくなるのか?

入力する側に、入れる理由がないからです。

社員の立場で考えると、こうなります。スキルを入れたら、何が起きるのか。経験を書いたら、どうなるのか。分からない。分からないまま入れるなら、当然、自分に不利になりそうなことは書きません。良いことだけを入れる人と、そもそも入れない人に分かれます。

そうすると、データに欠損が増えます。欠損が増えたデータは、集計しても意味を持たないので、人事も使えない。使わないので、入れた人にも何も返ってこない。「入れても何も起きなかった」という体験だけが残って、次の更新はもう来ません。

つまり、更新が止まるのは、社員の意識が低いからでも、入力ルールが甘いからでもありません。入れたあとに何も起きないから、合理的に入れなくなっているだけです。

ここを「入力の徹底」で解こうとすると、督促メールが増え、締切前に適当な値が入り、データの質がさらに下がります。真面目な会社ほど、この罠にはまります。

タレントマネジメントシステムが使われないとき、次に何を確認すればいいか?

確認するのは3つです。日々の業務の状態が反映される仕組みがあるか、入れたデータの使い道が決まっているか、入れる人にベネフィットがあるか。僕ならこの順番で見ます。

では、何を確認すればいいのか。僕なら、この3つを順番に見ます。

1. 日々の業務の状態が、正しく反映される仕組みがあるか

一番大事なのはここです。人材データは、人事が集めるものではなく、仕事の中で生まれるものです。

誰がどんな目標を持ち、それに対してどんな行動をして、上司と何を話し、どんな結果になったか。この記録は、日々のマネジメントが回っていれば、自然に溜まっていきます。逆に、日々のマネジメントと切れているシステムに、あとから人間の記憶でデータを足そうとしても、正確にはなりません。

確認の仕方は簡単です。先月、社員の業務で起きたことのうち、システムに反映されたものはあるか。目標の進捗でも、1on1のメモでも、フィードバックでも構いません。何も反映されていないなら、そのシステムは日常業務のどこにも接続していません。接続していないものは、更新されません。

2. 入れたデータを、何に使うのか決まっているか

「配置と育成に活かす」は、目的ではなく願望です。

具体的には、誰が、どの会議で、そのデータを見て、何を決めるのか。次の異動を決める会議で使うのか。管理職が1on1の前に開くのか。経営が四半期に一度、全社のスキルの偏りを見るのか。

使う場面が決まっていないデータは、使われません。使われないデータは、入れる側から見れば「入れても何も起きないデータ」です。1で述べた循環の入口は、実はここにあります。

3. 誰に、どんなベネフィットがあるか明示されているか

入れる人と、使う人が違う。これが人材データベースの構造的な難しさです。入れるのは社員と管理職、使うのは人事と経営。入れる側に何も返らないなら、続きません。

だから、入れる側へのベネフィットを、最初に言葉にしておく必要があります。自分の目標と進捗が一目で見えて、期末の評価に思い出し作業が要らなくなる。上司との1on1が、毎回ゼロから始まらなくなる。自分の経験が記録に残って、異動や登用の場面で見てもらえる。

これは「入力してください」というお願いではなく、「入れると、あなたにこう返ってきます」という約束です。約束が示せないなら、入力を求める前に、設計に戻ったほうがいい。

システムの運用定着と、マネジメントの運用は、何が違うのか?

ここまで読むと気づかれると思いますが、3つの確認はどれも、システムの話をしていません。

日々の業務が反映されるかは、目標と対話と評価が日常で回っているかの話です。何に使うかは、経営と人事が何を決めたいかの話です。誰にベネフィットがあるかは、マネジメントが社員に何を返しているかの話です。

タレントマネジメントシステムが使われないとき、足りないのはシステムの運用定着ではなく、その手前にあるマネジメントの運用であることがほとんどです。人材を管理する仕組みと、人をマネジメントする仕組みは、別物です。後者が回っていない会社に前者を置いても、入れる箱が増えるだけで、中身は増えません。

これは、システムを捨てる話ではありません。せっかく入れた箱を活かすには、そこに日常の仕事から中身が流れ込む状態を、先につくる必要があるという話です。

次に読むもの

日々のマネジメントが回っている状態とは何かは、パフォーマンスマネジメントとは何かにまとめています。目標が「期初に書いて期末に思い出すもの」になっている会社は、目標管理が形骸化する原因から。上司と部下の対話が期末にしか起きていないなら、「忙しくてフィードバックできない」は、順番が逆が先です。

コレドウは、この「日常の仕事から人材データが生まれる状態」を支えるパフォーマンスマネジメントシステムです。目標、行動、対話、評価の記録が期中に溜まり、それがそのまま次の目標と配置の材料になる。人材データベースを置き換えるものではなく、そこに流れ込む中身をつくる側の仕組みです。(プロダクトの詳細はこちら)

集めるデータがなぜ溜まらないのか、仕事の中で生まれるデータと何が違うのかは、次の記事人材データが溜まらないのは、入力の問題ではないに書きました。

よくある質問

タレントマネジメントシステムが使われない原因は何ですか?

入力する社員の怠慢ではなく、入れても何も起きないことです。入れたあとに何も起きないので、合理的に入れなくなっています。システムが目標と評価のワークフローにだけ使われ、人材データが更新されない状態になりがちです。

タレントマネジメントシステムの入力を、社員に徹底させるにはどうすればいいですか?

入れると何が起きるかを、先に示すことです。督促で解こうとすると、締切前に適当な値が入ってデータの質がさらに下がります。日々の業務の状態が反映される仕組みがあるか、入れたデータを何に使うのか、誰にどんなベネフィットがあるか。この3つを先に整えます。

タレントマネジメントシステムの導入後に、課題が出るのは珍しいことですか?

珍しくありません。導入経験者1,771人の調査では、62.1%が導入後に課題が発生したと答えています。上位は、現場に浸透しない、入力・更新が続かない、データが集まらない、といった内容です。

参考・出典

  • スマートキャンプ株式会社「タレントマネジメントシステム導入後の課題調査」(2025年9月17日〜23日、導入に携わった経験のある20〜60代1,771人、インターネット調査)https://boxil.jp/mag/a10171/

この記事の土台になっている考え方の全体像は、パフォーマンスマネジメントとは何かにまとめています。体系的な解説はコレドウ・パフォーマンスマネジメント全書(抜粋版)へ。

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