コレドウ
組織開発

「A or B」は賢く聞こえる。でも現実を動かすのは、いつも“両立”だ

・曽良 竜太

SNSを始めてみて改めて感じるのは、世論は「A or B」を求めがちだということです。

AIを使える人が勝ち、使えない人は遅れている。逆に、AIの時代だからこそ人間にしかできないことに集中すべきだ。効率か、対話か。仕組みか、人間らしさか。こういう二択は盛り上がる。わかりやすいから。

でも、世の中を変えてきたものを見ていくと、多くは「どちらかを選んだ」のではなく、トレードオフだと思われていたものを両立させていました。

iPhoneは、機能を増やすほど操作は複雑になるという常識を壊した。ボタンを全部やめることで、多機能なのに迷わない、を成立させた。プリウスは、環境性能を上げれば走りや使い勝手が犠牲になるという前提をずらした。ユニクロは、安いか品質か、という根深いトレードオフに手を入れた。

敬愛する濱口秀司さんは、クライアントのバイアスを見極めて壊すのが仕事だと言います。バイアスとは、日々の経験が積み重なって条件反射になったルールのこと。「これがきたら、こう」。便利だけれど、いつの間にか疑わなくなる。厄介なのは、本人はそれにかかっていることに気づけないこと。

「A or B」も、たぶんこのバイアスの一種です。効率を上げれば温度は下がる、仕組みを入れれば主体性は死ぬ――どこかでそう刷り込まれて、検証もせずに前提にしてしまう。

AI活用もまさにそうだと思います。AIに任せることと、人間が価値を出すこと。一見トレードオフだけれど、逆だと思う。任せられることを任せるからこそ、人間は問いを立てたり、決めたり、相手を理解したり、合意をつくることに時間を使える。

私の事業領域であるマネジメントも同じです。仕組みで管理すれば主体性が死ぬ、評価制度を入れれば対話が冷える、目標を縛れば可能性を潰す――全部、疑われないまま前提になっているバイアスだと思う。本当は両立できるし、両立させないと意味がない。

面白いのは「どちらが正しいか」を選ぶことではなく、みんなが疑いもしないトレードオフを見つけて、壊しにいくこと。そう見ると、極論を言い合っているSNSは、イノベーションの宝庫だなと思います。